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June 28, 2005

教えを請うのは「偉大な先生」の必要があるか?

大学進学や大学院進学の際に,その大学を選択する理由として「いい先生がいるから」というものがある.それはそれで納得のいく理由のようにも見えるが,果たしてどのくらいのものだろうか.

 そもそも,高校生や大学生が考える「いい先生」を判断する基準は,研究者として多大な業績をもっている,マスコミなどで知名度が高い,著書などをたくさん持っており,その著書に感銘を受けた.などがある.また,そのほかの根拠として「有名大学の先生なら,優秀だろう」といった判断も加わる.なるほど,そういう先生につくのは,得るところが多そうである.本当にそうなのかを,まずは問題点から考えてみよう.

【反論】
(1)良い研究者が,良い先生とは限らない
 研究の能力と,教員としての教授能力は,必ずしも同一のスキルから構成されるものではない.また,研究者として優れている場合,そのタレントを教育にかけている場合ではなかったりする.もちろん,全く無関係ではなく,ある程度の相関はあるだろうが.
(2)先生は,そもそも必要な能力を持ちえているかもしれない.
 どんな先生であっても,それなりの「選別」はされてきている.中学や高校の先生は「教員採用試験」というものがあり,狭き門でもある.大学教員もそれは同じことであって,そもそもある程度以上の「評価」を受けていなければ,なれないことが多いだろう(もちろん例外があることは否定しない).卒論どころか,修士・博士と一定のトレーニングを受けているのだから,「学生に対応できない」ほど能力の低い教員は,あまりいないかもしれない.
 過激なことをいえば,どんなに優秀な「大学生」でも,先達の研究者や先生を越えるような力は,そうそうもてるものではない.その差は比較的歴然としている気もする.経験の長さは,結構ものを言う.まれにそうではない領域もあるとは思うけれど.
(3)「学び」は先生から受けるものとは限らない.
 同級生と喧々諤々議論をしたりすることも,アカデミックなトレーニングとしては重要である.既に一定以上のことができるようになった「先生」のすることよりも,試行錯誤したり,少しだけ先を行っている「先輩」を見ているほうが,より教育的な意義のあることも多いだろう.そういう「真面目な学生の多い」大学や,「熱意のある」大学を探したほうが良いかもしれない.
(4)大学は「お勉強の場」ではない
 大学はともかく,少なくとも大学院は,「教えてもらえばいい」というものではない.アカデミックな場であるなら,各自新しい知見や発見をしなければならないのだから,もはや「教えてもらっている」だけではだめで,自分で進化する能力が大体において必要.先生はあくまで「アドバイス」くらいのことはできるが,実際の成功は,学生本人の力による.
(5)偉大な先生の仕事,若手の仕事
 若い先生には「熱意」があったりもする.大体において「若い大先生」は少ないので,現在の時点で指導能力の高い教員は,結構あちこちに散らばっていないだろうか?

【擁護】
(1)偉大な研究者のみが知る「世界」がある 
 非常に高度な見識やセンスは,やはり「一流」しか持ち得ない.その意味では,一流のもとにいなければならないかもしれない.
(2)「良い大学」は「良い文化を持っている」
 たとえば高校,有名進学校と中堅の進学校,入学時の点数からすると,それほど差はない(1教科あたり5〜6点程度の違いしかないことも多い,時として,挽回も可能だったりする).しかし,卒業時の進路には大きな差があることがある.実は3年間のなかで,「学校文化」の違い(たとえば,テスト前にみんな勉強する高校か,みんなつい遊んでしまうか,など)によるところが大きかったりもする.
 大学にも,入った後で「勉強させる大学」とそうでない大学の差は,割と歴然としていたりする.

色々考えると,進路の選択は,当然入った大学の問題より,その後の本人の「仕事」の問題によるところが大きいように思われる.また,教員のスキルその他についても,その教員の経歴より,その後のさまざまな要因が大きくかかわっているようにも思われる.要は,どんな進路に進んでも,望めば必要なものは得られるのではないかということ.
とはいえ,そういう「本当のところ」を見抜こうとしても,そんな情報は滅多に手に入らないし,大学案内にもそう書かれるものではない.結果,進路を選択する側にとっては,手軽な基準として「その学校の格・難易度」が幅を利かせることになる.学校というところは,そういう部分をもっと考えていくべきではないかと思う.また,その辺を上手に手を入れることができた学校は,今後伸びていくのではなかろうか.
 

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