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September 27, 2006

「禅智内供の鼻」 

このエッセイ,今考えてもわりと興味深いネタである。

「禅智内供の鼻」(初出1999年頃か) 

 「禅智内供の鼻といえば....」でおなじみの,芥川龍之介の名作「鼻」,国語の先生を長年やっている私にとって,文学史を教えるときには必ずと言っていいほど取り上げられる作品である.それにしても生徒から毎年のように感想としてあがるのは,「すっげー鼻」ということである.

 自分自身,彼の鼻はずいぶん興味深いと思う.なんといっても長さ15〜18cmあまり,上唇からあごの下まで垂れ下がるというのだから恐れ入る.それより何より興味深いのは,彼の鼻が小さくなりうるということである.

 「鼻」では,ある人が彼の鼻を熱湯につけて,その鼻を踏むと良いという.内供これをすぐさま実践したところ,熱湯にくぐらせた鼻はみるみるうちに赤くなり,これを踏むと毛穴の中から白い虫がでてきて,これを取り除くというのである.果たして内供の鼻はみるみる小さくなり,彼も喜ぶのだが,一月としないうちに元に戻ってしまうというのだから不思議な話である.少なくとも私は,この鼻は一体どのような理由でこの様に大きいのであろうかと,長いこと不思議に思っていた.

 しかし,ある日,私の思いは一気にカタがついたのである.

 あるとき風呂上がりに,「鼻の毛穴パック」を試しに張り,それをはがした私は,その毛穴の詰まりをみて,「すごいもんだ」と感心するとともに,「あっ」と叫んだのである.「これだ,禅智内供の鼻は!」

 私の推理はこうである.すなわち,内供は脂性の鼻なのだと.その特異な脂性ゆえ,彼の鼻の毛穴にはおびただしいほどの油が詰まる.これを蒸せば当然毛穴は開き,中から白い脂がとれることであろう.これによって鼻は著しく縮小する.しかし,である.体の代謝により再び生産された皮脂は,再び彼の毛穴に蓄積し,当然のことながら鼻は元に戻るであろう.

 そうだ,これなのだ.これなら科学的に説明がつく.さらにこの「鼻」は完全な芥川の創作ではなく,今昔物語からのオマージュである.古き時代にこの様な実例がなかったと,誰が言い得よう.敢えて断言する.これは文学史上の大きな発見であり,文学と科学の偉大なる成果であると.

 しかし,これが科学足り得るためには,どうしても鼻の大きさと皮脂の関係を検証せねばなるまい.このため私は,現在鼻の大きな人の毛穴を観察することに余念がない.禅智内供よ,君は20世紀の美容科学のきっかけとなる,「偉大な」鼻を提供したのである.

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