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September 27, 2006

薬の値段

いま思えば,メタボリック薬品に触れている話題のエッセイ。我ながら面白いところに目が行っているなあ。

「薬の値段」 (初出,2000年頃)

久しぶりに風邪をひいた。

 はじまりは、皮膚の敏感さがいつもよりアップするような感じの、例の悪寒から。「こりゃあ来るな」と感じたときにはもう遅い。仕事を全うして帰宅したころには、もう熱は38度を悠に超えるのである。

 これではこれからのスケジュールに差し支えるというので、帰りに風邪薬を買って帰ることにした。風邪薬といえば、あの塩化リゾチームや塩酸ブロムヘキシンなる、名前だけでひれ伏してしまうような成分の配合されたパ○ロン、とかエ○タックが有名だが、この僕には何となく効かないのである。まあ随分飲んでいるから、体が慣れているのかも知れないしね。やはりひき始めの風邪は葛根湯とかが良いのでは、あるいは「♪カ〜ゼにカッコカコ、カコ○ール」か?といろいろ考えるうちに、ともかくカコ○ールに使用という結論に達し、薬屋へ赴いた。

 さて薬屋である。まだ十月の終わりというのに、かぜ薬の特設コーナーが既に出来ている。「今年の風邪はしつこいぞ!」などと、そんなんひいたばっかりのうちから分かるかい、と言いたくなるようなコピーまでぶら下げてある。まあそれはどうでもいいと、早速カコ○ールを探す。あった、3本1箱で¥880-。手を出そうとした瞬間、となりにも同様の水薬らしい存在があることに気がつく。「龍○散の葛根湯薬」。おお、あの龍○散も作っていたか。しかも¥598-。三百円近くも安いのである。

 ドリンク剤(例えばユン○ル)などは、配合されている薬効成分の多少によって価格が決定する。ということで、裏の成分を確かめる。カッコン8g、マオウ4g、タイソウ4g、ケイヒ3g....、何だい、全く同じではないか。ということで、後者を購入して飲むことにする。差額分はビタミン剤を買って併用。使用上のルールには反するかもしれないが、まあ良しとしよう(注:医薬品の併用は、副作用をもたらすことがあります、よい子・よい大人はまねしないでね)。その後、風邪は拡大することなく収束的に推移、発病から3日目の現在、熱は残るものの順調に回復しているようである。

 考えてみると、薬の値段の違いとは、何とも不可解なものである。さっきのドリンクのように、成分のグレードによって価格が決定するなら良く分かるのだが、これが同様の薬剤を無名の会社が製造した場合、価格は同様に格安となる。普通大企業の方が大量生産によって価格を引き下げることが出来るという原則を、中学のとき公民で習ったような気がするが、勘違いだったろうか。胃薬にはさらに不可解な状況が生じる。近年のH2ブロッカー配合の薬剤はちょっと良く分からないが、これまでの胃薬の主成分は、意外なようであるが炭酸水素マグネシウムのような、実に単純なアルカリ性の薬剤である。つまり胃酸過多でむねやけ・むかつきが起こっているのが多くの原因だから、中和してしまおうという、中学生の理科知識で解ける実に単純な仕組みである(ということは、飲んだ後に出るげっぷは、反応で出た気体なのだな)。その他に胃壁を守るなどの役割を持つ2・3種の薬物を配合して、だいたい30包¥1,000-前後で発売されることになる。これに対して伝統の胃薬○田胃散は、十種近い(それよりも多かったか?)生薬をさらに配合して、何と小缶が実売¥400-程度である。しかも一缶で50回分、下手すると100回近く飲めるかも知れないのである。ありがとう、イイ薬です。

 確かに、新薬は開発費がかかり、さらに治験などにも相当に費用がかかるのだろうから、既に開発費のかからない旧薬は、安くて当然かも知れない。にしたってあまりの違いではないか?というより、良心的な製薬業と、そうではないところがあるような気がしてならない。

 ときどき(しばしばか?)、大学のセンセイにリベートを渡してまで、新薬の承認に便宜をはかるよう求める製薬業を見かける。近ごろ不祥事の責任を取って解散した某製薬会社(色の名前のついたあの会社)は、今から15年ほど前(筆者が小学生だったと思う)、インサイダー取引か何かでも摘発を受けていたように記憶している。どうも薬は信用できないのだ。ひょっとすると、我々は毎日頻繁にコマーシャルに出てきて、薬のセールスに余念のない美人タレントの、ハナ薬(媚薬)に高い金を出しているだけなのかもしれない。

 天声人語のような終わり方になってしまったが、トニモカクニモ、僕の風邪は今、薬の効果か、それとも気合か着実になおりつつある。

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Comments

こんにちは。
特許切れの薬はジェネリック薬品ですね。

医薬(病院で使う、処方箋が必要なやつ)と
大衆薬(その辺で売ってる、CMしてるような薬)は
値段の決まり方が全然違うようです。
大衆薬はみんな特許切れなんじゃないでしょうか。
あとは、おっしゃる通り広告費とかそういうので決まるんでしょうね。

Posted by: ゆ | September 27, 2006 at 09:38 PM

ゆさんへ
なるほど,特許切れなのですね。
まあ大衆薬は大体日本薬局方のスタンダードなものばかりが配合されているように思います。だったら安い方がいいなあと思うので,大抵風邪を引いたときは,ドラッグストアの片隅で,ずっとつっ立って成分を見比べています。それだけでも熱が上がりそうです。

Posted by: nikata | September 27, 2006 at 10:09 PM

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