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October 23, 2006

大学教員の研修

 2008年を目標に,大学教員に対して,教育のための研修を義務づけることになったという。
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文部科学省は大学・短大教員の講義のレベルアップのために、全大学へ教員への研修を義務づける方針を固めた。早ければ08年度4月にも義務化する。研究中心と言われる日本の大学で、学生への教育にも力点を置く必要があると判断したもので、『大学全入時代』を迎え、学生の質の低下を懸念する経済界からの要請も背後にある。具体的な研修内容は今後、中央教育審議会で検討する。
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 一般論からすれば,大学教育の向上として研修を盛んに行うことは賛成。しかし,である。なぜ「義務」なのか,なぜ「研修」するのか,そして「何を」研修するのか。全く以て怪しいような気もするのである。

 専門(認知心理学)の性質上,大学教育の質の向上にはこれまでも興味があった。中学や高校の先生のように,教育自体の「研究会」も乏しい大学教員は,1人でコツコツ努力しなくてはならないという側面があることも理解する。しかし,お役所主導の「研修」で
「今求められる大学教育とは」とか,
「講義における電子メディアの使い方」
 なんてレクチャーなど,不適格教員の烙印を押されてもいきたくないのが正直なところ。そのくらいの努力をしている先生なら,実際たくさんいるというものだ(そうじゃない先生は,今すぐ研修に参加するか,辞めるかして欲しい)。
 私は少なくとも「大学教員は自分の力でスキルアップする力を持っている」と信じる。だから研修ならば,少人数の先生であれこれ議論する「勉強会」や,その道の大家に教えを請いにいくようなものも「研修」に含めて欲しい。例えば心理学でいえば,
「錯視の授業,どう教えるか,図版はどうするか」とか,
「因子分析の授業,もっと分かりやすく,もっと使いやすく」とか,
「社会心理学,最近はここまで来た,ここまで教えられる」などのように
 せめて「分科会」的な内容を虎の穴のようにトレーニングするような研修であって欲しいのである。重ねて言う,今までお役所が主導してきたような,「あの手の研修」ならまっぴら御免である。もっといえば,みんなでスキルアップしようという時に,旧態依然のレクチャータイプの研修ももういい。教員ならみんなでネタを持ち寄ってあれこれ議論し,さらに新しい手法を開発したりしましょう。いつも言うが,研究であれ教育であれ,各人の「工夫」なしにはベストは尽くせない。
 大体において,教育方法に「標準的な何か」があるわけではない。先生の個性・能力なども含めて,「自分なりの・相手に見合った」方法を常に考え続け,カスタマイズすることなしに良い方法があると思うのがそもそも間違いというものである。教育はマクドナルドのような全国共通の味で良い訳ではない。だからこそ,画一的なものを「義務」づけようとする行政の「安直なやり方」に疑問を呈すのに,ちょっと考えたことのある人なら吝かではないと思うのだ。
 そうこうしていたら,いつもの内田先生はこういう書き方をしていた
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教育基本法を改定し、教師の資格制度を整備し、学習指導要領を緻密化し、教育委員会による教師たちの統制と支配を強化する・・・という施策は「ありうべきたこ焼き」を全国のたこ焼き屋に作らせるために、「たこ焼き基本法」を整備し、「たこ焼き士」認定制度を作り、「たこ焼き作成要領」を法整備し、「たこ焼き監視官」を全国に網羅的に配備して、「青のりの散布量が標準値よりも少ない」たこ焼き屋を摘発するのとまったく同じことである。
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 そう,そういうことでは本当に大学教育を向上させることにはならないと思う。ましてや「経済界からの要請」に応えて,学術界や近隣社会,任侠界の要請には応えない教育をしてもイカンと思うのです。ほら,大学は「社会に有為な人材」を送るのだから,一部の社会にのみ都合のいい人を送り出してもイカンと思うのだけれど。

 いろいろまとまりがなくなってきたから一旦止める。また思いついたら書きます。
 

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Comments

経済的人間としての人間の在り方が人間のあり方すべてだと思っている連中なのです,あいつらは。

Posted by: 中猫 | October 24, 2006 at 06:03 AM

うーん。叡智とか発想というものは「生成」するもので,研修によって「降ってくる」ものではないよなあ。と思います。
そういう「大事なものは俺にくれよ」的な物乞い主義でいいものかどうか...

Posted by: nikata | October 24, 2006 at 12:56 PM

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