« 残念なことに | Main | メトロミントが美味しい »

May 01, 2007

浮遊する旅

 連休の前半は,金沢を離れた中規模の都市を訪れた。それぞれの地域の風情というものがあるが,最近の地方都市というのは画一化が著しく,町を歩けばABCマートだのカプリチオーザだのスタバだのと,代わりばえのしない町が並ぶ。
 その見慣れない街はまた何となく懐かしく,自分の感覚で歩いていける街だった。こちらにいけば飲食街,こちらへ行けば官庁街と,地図を頼る必要がまったくない。しかしそれはやはり見慣れない街で,ここには電気屋があるのだろうと目星をつけた角にはゲームセンターがあり,ここは映画館かと見当をつけたところは複合ビルだったり,デパートと思しき建物の中にモダン・アートの美術館があったりと,やはり思いは裏切られるのだった。大きな書店らしいところに入り,そこは実際に大きな書店で,慣れないレイアウトの店内で,ルポルタージュの文庫と村上春樹を手に入れた。
 とはいえ感覚にさしたる違いはなく,これはと意を決した通りでは,実に納得のいくラーメンを食べることができた。そして街には連休らしく沢山の人が歩いており,私が好きなタイプのエキゾチックな美人が,いや本当は美人ではないかもしれないのだが,好きなタイプの顔のお嬢さんがそこかしこにいるのだった。
 浮遊する感覚の中で,一つの建物に入り,少し高い階の窓から遠くの山を望み,そして近くには有名であるところの天守閣を見たとき,私はそこが15年ほど前まで住んだ,何のことはない郷里であることを確認した。道そのものと取り巻く自然以外,もう私が拠り所とするものはない。それは英語以外話せないイタリア系アメリカ人が,たまたまイタリアに旅して自己のルーツに誇りを持つような瞬間に似ている。根ざすべきところを失った浮遊する私はまた,骨を埋めるところも見失ってしまったようだ。

|

« 残念なことに | Main | メトロミントが美味しい »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/92639/14912574

Listed below are links to weblogs that reference 浮遊する旅:

« 残念なことに | Main | メトロミントが美味しい »