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November 29, 2009

井上道義指揮 オーケストラアンサンブル金沢&新日本フィルハーモニー管弦楽団

2009.11.28 石川県立音楽堂
演目 マーラー 交響曲第3番 メゾソプラノ バーナデッド・キューレン

 「あの指揮者,夏の風景のマーラーを,天上風景にしてしまった」

 その編成の大きさゆえ,なかなか簡単にお目にかかることのできない3番。金沢では2002年11月のシャイー・コンセルトヘボウ以来の再演である。今回は小編成オケのOEKに助っ人として新日本フィルが入るというもので,第一楽章はOEKが第一パートを担当し,残りは新日本が担当するという変則的組み合わせとなった。ステージ全体に所狭しと楽員が並び,見るからに大編成である。配置は両翼にヴァイオリン,ホルンは左翼に,パーカッションが右翼となっていた。
 この3番,オケの力量が存分に問われる。特に第1楽章はなかなか決まらないようで,今回もホルンや弦など,必ずしもバランスが取れていたとは言い難い。特に管が存在感を持つと,弦がすっかりかき消されがちになる音楽堂の特徴にも大きく影響される。それでも音楽自体は初めから心にぐっと刻まれるもので,おそらくはこの曲自体の不思議な魅力によるところが大きいのだろう。井上の解釈は派手に鳴らし,テンポも相当に揺らすもの。場合によっては賛否の分かれるものかもしれないが,こと井上にかかると「だってそうしたかったんだも~ん」くらいに伸び伸びと聞こえてしまうところがこれまた不思議なところである。明と暗の対比が明快な第1楽章であるが,暗いところもやや明るく,明るいところはエネルギーに満ちた快活さをもっていた。ここではトロンボーンのソロが秀逸。
 第2楽章以降演奏はいよいよ細部まで明快に,それぞれの音がしっかりと意味を持って届くようになった。第3楽章の最終部,大きな盛り上がりを見せるところでいきなり合唱及びソリストの入場。おもわず注意を摂られてしまったところで,実は見事に決まったエンディングを響かされる。これは勿体無い。最後の余韻だけが美しく残って,細部まで聴けなかった。
 メゾソプラノのバーナデッド・キューレンはかなり子音のはっきりした歌い方やビブラートの強さが,若干ながら楽章の性格よりきつめに出てしまったのが残念。また舞台の向こうのポストホルンも細かいところで残念な演奏となった。
 第5楽章もこの曲の聴きどころ。今回のために特別編成された女声合唱は驚くほど素晴らしい演奏を聞かせた。この曲に求められる透明感,blendnessといったものがアマチュアながら見事に達成されており,歌詞の持つ意図を十分に伝えるものだった。
 さて,それまでと違い第6楽章は緻密な構成と表現にささえられ,弱奏から次第にクライマックスへ昇華するこの曲の最大の聴きどころである(個人的には1楽章だが)。弦は瑞々しくも暖かに,内に秘めたその祈りにも似た情感をつくりあげた。ここでは井上はそれまでと打って変わって,エネルギーの放出と抑制を巧みにコントロールしながら,この巨大な伽藍のような楽章を丁寧に鳴らし,荘厳な響きを最後まで維持し続け,聴き手のカタルシスを存分に導いていたように思われる。この曲はいつでも,どんな形でも私たちを感動に誘う。そんな思いに浸れるコンサートとなった。


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Comments

実は金沢公演があまりに良かったので、翌日の富山公演にも行ってしまいました(^^;)。
二回目だけあって、富山の方がリラックスして演奏している感じでした。それと、合唱を客席の方に出して(女声合唱を両壁のバルコニー席、児童合唱を中央最上階の席)配置していましたが、非常に効果的でした。

Posted by: た@こーだい | November 30, 2009 at 07:08 PM

>た@こーだい さま

えー!うらやましい。ずるい~!
確かに,在京のオケであれほどのクオリティで聴けたかは怪しいくらい良かったですね。合唱を高いところにもっていくのは正解だと思います(オーバードは良く響くし)。それにしても,羨ましい。

Posted by: nikata | November 30, 2009 at 08:28 PM

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