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March 24, 2011

ゼロリスク探求 という宿痾

 普段あまり引用はしないようにしている本ブログだが,大変面白い論考を見つけたので,私論を含めて公開することにする。もとは池田正行先生(現 長崎大学)のホームページ。著書も伴っているので,引用としてまずは示すことにする。本文はこちら。
 簡単に言うと,「自分が安全な立場にいたい」という動機から,その立場を守ろうとする行動,認知活動をすることである。そしてこの活動は,そもそもわれわれが個体としては弱く,かつ不条理な世界に生きているという前提の回避,ないしは否定に端を発しているといいうことかと思われる。個人おろか,社会や自然までコントロール可能であるかのような幻想に陥る,高度な文明社会のもつ「宿痾」のひとつの表現型ではないだろうかとも思われる。
 そして,この表現型は,リスクや情動を煽った上で収束を図らないマスコミや,とりあえず身内のために買いだめを続ける個人に典型的に見ることができる。それを批判する分際にはないが,本来の意味での成熟した個人としての人間像には程遠かろう。
 この概念,心理学ではこの概念のままではまだ浸透していない。しかしこの傾向,心理学(特に社会心理学)あたりでは,面白い題材のようにも思われる。あいにく専門ではなく,どのくらいの知見があるのか分からないが,リスク研究という分野もあるし,それなりに知見があると思われる。もしご存じの方がいるなら,少々教えて欲しいという「緩募」である。


ー以下引用ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ゼロリスク探求症候群とは?
 私が,”ゼロリスク探求症候群”と呼んでいる普遍的な社会病理があります.これは,一言で言えば,”ゼロリスクを求めるあまり,リスクバランス感覚を失い,他人が犠牲になることも理解できなくなる病的心理”です.この症候群は,これまで,しばしば重大な社会問題を起こしてきました.(中略)ゼロリスク探求症候群の特徴は次の通りです.

1.感染症・中毒といった病気や,食品・飲料水といった生存に必須な物資の安全性を求める行動が根本にあるので,正当化されやすい.例:病気になりたくない,生活必需品を確保したい.

2.リスクを過大に評価する誤解やデマが背景にある.例:らい病は不治の病であり,接触によりうつる,MRSAは凶暴なばい菌だから,保菌者は隔離しなければならない.BSEの牛の肉を食べると必ずクロイツフェルトヤコブ病になる.

3.個人レベルでは影響がないか,ごく小さい.例:らい病患者が隔離されても,自分は痛くも痒くもない.自分一人が牛肉を控えることと,焼肉チェーン店が倒産して大量の失業者が発生することとは直接関係ない.

4.しかし多数派化・集団化によって社会問題化する.例:らい病やMRSA保菌者の隔離問題は言うまでもなく,炭疽菌感染の予防にと,たくさんの健康な人が抗生物質を要求することによって,本当に必要な人に行き渡らなくなるような事態もそうです.

5.ゼロリスク探求により生じた社会問題の責任を,行政やメディアに求める. 例:らい病患者の隔離はすべて旧厚生省が悪い.BSEの発生はすべて農水省が悪い.BSEの風評被害はすべてメディアが悪い.炭疽菌用の抗生物質が足りなくなるのは,すべて厚労省と薬品会社の対応が遅いからだ.

 こういった論理の背景には,自分自身の責任を認めたくない,自分はあくまで無垢な一般市民であると考えたい心理が働いています.そのためには,役所のような,決して反撃してこない公組織は絶好の攻撃対象です.
 ゼロリスク探求症候群への対処がやっかいな理由も,以上の特徴で説明できます.すなわち,
 1の安全を求める行動は非難できないばかりか,しばしば正義を主張します.
 2の誤解やデマは,正しい情報へのアクセスを確保することにより,ある程度対処できますが,社会的なパニックの時は,間違った情報の方が大量に出回り,正しい情報が埋もれて見えなくなってしまいます.また,パニックの時は行政機関が非難の対象になっていることが多く,そこからの情報が信用されません.数少ない中立機関が情報発信すると,各方面からの問い合わせが殺到して,機能が麻痺してしまう恐れもあります.
 3,4の,個人の行動が社会問題を引き起こすということは,理屈ではわかっていても,1の安全を求める行動が優先して,しばしば抑制が効きません.このため,
 5の,行政やメディアといった組織を非難の対象にして,個人の責任を問わないという逃げ道が作られます.
ー引用ここまでーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

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