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March 24, 2011

結論だけを語るな!

 面白いツイートを見つけた。田中優さんという方と,小林武史の対談。http://www.eco-reso.jp/feature/cat1593/20110319_4986.php これを見ると,「犬吠埼から房総に一万数千基の風力発電機を設置すると,東電の電気がまかなえる」というものである。研究者たるもの,一応調べてみたいので,ちょっと調べてみた。東電で必要な電気を(軽く見積もって)4000万kwと仮定して,全てを風力でまかなうと,実は40000基必要となる(大体一基1000kwが主流)。おそらくこの話は,原子力を風力に置き換えるという話なのだ(だったらそう書くべきだが)と理解し,15000基程度で東電の原子力を風力で置換する費用をざっくり換算。40基と変電所のセットの設置費用が200億程度(wikipediaより)として,設置総費用が7兆5000億円。関東の人口が4000万人なので,一人あたりの支出が約20万円,一世帯あたり約50万円。
 来年までに原子力を廃絶するためには,えらいことになる訳である。もちろん量産のコスト減とか,設置場所の問題とかは無視しているので,こういう思考実験は正確ではない。いずれにせよ,簡単にこれより安くならないことはわかる。結論だけ聞くと素晴らしく聞こえるが,こちとら去年まで弱小公立大学の先生だ,役人並みに金勘定だけセコい,これが現実味が弱いことは,まあ分からなくはない。

 今週のテレビやネットの報道を見ていると,「こういう結果だから危険だ」,「政府もこうしてくれないと」という,望ましい結論をピタリと教えてくれる。そう,みんなそうなって欲しい。しかし物事にはプロセスがある。正確な情報も,望ましい帰結も,そこに行き着くには時間とコストがかかることは意外に考慮されない。
 研究者にとって,結論以上に重要なのは,結論に至るプロセスと方法である。結論だけがよくなるなら,捏造だって恣意的な操作だって可能だからだ。そういう不誠実さを避けるため,大抵の研究者は面倒なほど丁寧にプロセスを説明する。極端なことをいえば,結末をハッピーにするだけなら,神様だって動員可能なのである。現実はそうは行かない。
 
 だから言いたい,情報を伝達する立場,特に研究者は,せめて結末に至るためのプロセスを示して「専門家づら」してほしいのである。「未来はこうなっていくべきだ」としたり顔をするまえに,「こういう順序が必要ですが」を少しなりとも説明すべきと思う。結果だけを述べて,納得させようとする態度には,正直なところ敬意を払えないのである。

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