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March 17, 2015

絹子と木綿子

Blog368

 日本人に生まれて40年余り。豆腐とは長い付き合いである。豆腐の味噌汁,中華の麻婆豆腐。冷奴に湯豆腐。長じて酒を嗜むようになってからというもの,特に冷奴は「とりあえず何かつまみ無いか?」の強い味方である。プラスチックの容器から出し,鰹節をかけて醤油。これだけで十分。なんと簡単,なんと平和。
 しかし考えておきたい。豆腐には「絹ごし」と「木綿ごし」があるのだ。冷奴を食べようという時,どちらにすれば良いのか。うちは絹ですという家庭あり,いやいや木綿がという御仁あり。パスタの茹で具合でイタリア人は北と南に分かれ,焼酎のお湯割りは焼酎が先か湯が先かで九州の民は議論する。豆腐であってもそこははっきりしておきたいというのが日本人ではあるまいか。なぜ木綿と絹は話題にならないのか。

 実はそこには触れにくい理由があるとも聞く。実は絹ごしと木綿ごしは絹子(きぬこ)と木綿子(ゆうこ)という姉妹であるという。同じ大豆という父を持ち,同じにがりという母を持ち。布団も同じ木綿という全く同じ生まれ育ちながら,片方はつややかで繊細な美しい肌を持ち,片方はがさつな見た目をもつ姉妹。絹子はあんかけ豆腐といった高級料理界にも顔が利く反面,木綿子は冷奴や白和えといった下町の居酒屋でオヤジ達に「安いやつだねえ」とからかわれながら生きる。どちらも皆に愛され,あちこちに顔が利くという力を持ちながら何故に?と父の大豆は首を傾げたという。

 だったら両方とも食べ比べてはどうかと。40年生きてきて,木綿と絹を同時に食べてみようと思ったことはなかった。2つ買っても100円前後,これはやってみるべき。そこでスーパーに行き,木綿と絹を買おうと思ったら,「木綿vs絹」というセットがあるではないか!相模屋食料というメーカーが最近になって発売したという。それも業界初なのだという。何という意見の一致,相模屋食料の慧眼を讃えずにはいられない。
Blog367
 一つ一つを開けて皿に,今回は豆腐の個性を尊重するためどちらも鰹節と醤油だけにしてみた。日本酒は北陸のあっさりした銘酒立山の本醸造である。

 食べてみると木綿は存在感のある冷奴である。口にした瞬間から豆の味がぐっと前に出てくる。青臭いアクの香りが醤油や鰹の強さとよく調和して,程よい歯ごたえが酒のつまみとしての安心感を与える。これに対して絹はあくまで優美・繊細。肌を流れる醤油を鰹節で押しとどめ,ふわっとした豆乳の香りとそれを覆う醤油と鰹の香りで食べる。個性の強い酒だと負けそうになるので,あくまで豆腐とじっくり向かい合う必要がある。繊細で男が目を離すわけにいかない絹子,これに対して放っといてもきちんと身辺きちんと整える木綿子。それぞれの持ち場で活躍する二人ではあるが,改めてお互い相見える場でよりそれぞれの個性を尊しとしたい。

  これからは居酒屋で冷奴を頼むときも,心して頼むことにしよう。男の一人酒,どちらが出てきて癒してくれるというのか,明日への発破をかけてくれるというのか。


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