NHK交響楽団 ベートーヴェン交響曲第9番
2016年12月23日 NHKホール 指揮 ヘルベルト・ブロムシュテット
師走も下旬の23日。一昨日も出張で来た東京だが、プライベートで来るのは何年ぶりだろう。年末のベタ行事、第九を聴きにNHKホールまで。普通ならそんなことまずしないが、N響創立90周年記念。タクトは御歳89歳のブロムシュテット。こんな機会もうないかもしれない。本当に珍しくチケットをとり、貯まったマイルで飛行機のチケットをとり、金沢から東京までやって来た。
思い起こせばサンフランシスコ交響楽団時代には端正な姿と解釈。数十年にわたって日本でも馴染みのマエストロ。微かに姿勢は前傾気味になったとはいえ、シャキッと立っている姿は素晴らしい。
さて第九。N響といえばちょっとくすんだ弦が魅力だが、それはまあ変わらず。今日は金管の乱れが多かったように思うが、それもまあどうってことはない。第一バイオリンの後ろにチェロとコントラバスが配置される対向配置。合唱も女声が前、男声が後ろに。こちらは右側2階席で、低音とピッコロがよく通った。
ブロムシュテットは楽譜どおりのテンポを堅持するという。実際よく聴くものよりキビキビと速い。折り目正しい鳴らし方とはこういう感じかと思うくらい。タテにズバッ、サクッと歯切れが良い。もっと深く弧を描いてズンと響かせるような感じではない。端正というよりキビキビ。第九は8分の6拍子の部分が多く、ラタタラタタという躍動感に注意することをしばしば言われる。しかしブロムシュテットは全てが4拍子であるかのようなタテのとり方。それがとても印象深い。
声楽はソプラノからシモーナ・シャトゥロヴァ、エリザベート・クールマン、ホエル・プリエト、パク・ジョンミン。特にバスのパクは豊かな声で美しかった。4人の合唱の時に声のバランスが崩れがちなところはあったが、それぞれ美しく聴かせる。東京オペラシンガーズの合唱も安定してさすが。クレッシェンドやダイナミクスのメリハリを利かせた感じではなく、ストレートに歌わせた指示はブロムシュテットの考えによるものだろうか?
全体に快調なテンポの第九だが、だからこそ最後の部分で急速なアッチェルをかけるような演出もなし。実直に最後まで通して終わった。
遠くて表情まで伺えるというほどでもなかったのだが、最後に楽しそうに台から降りたブロムシュテットは本当に良い顔に見えた。そして多くのファンが惜しみない拍手を送る中、優しく何度も応えるのを見ると、何より来てよかった。
来年はライプチヒ・ゲヴァントハウスを率いて来日するという。来年は卒寿。もう本当に彼の健康を願ってやまない。
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