Tommy Flanagan:Overseas
★★★★☆(正統派好きへ,またジャズピアノが上手くなりたい人へ)
私の憧れたジャズピアニストといえばチック・コリアとミシェル・カミロの2大巨頭,ずっと後になってマッコイ・タイナーと小曽根真といったところだが,どれも「バカテク」だったりして真似ようにも真似ることが能わない。これに対してジャズ研時代プレイの参考になったのはシダー・ウォルトンと秋吉敏子,そしてこのトミフラ。分かりやすい,耳で追える,基本に忠実の3拍子揃っている。コルトレーンの''Giant Steps''では涙目のプレイもあったりするが,ほとんどの場合実に手堅い良い演奏を聞かせる。
その中でも名盤の誉れ高い本作。トミフラが肩の力の抜けた感じで,のびのび楽しそうに弾いている。1曲目の''Relaxin' at Camarillo''や7曲目の''Verdandi''では弾きたい放題に弾いている。ピアノから引き離しても手だけ動いてそう(笑)。その他,有名な''Ecrypso''では楽しいラテンナンバーを聞かせ,一転して''Chelsea Bridge''はメランコリックなフレーズで攻めてくる。その後ろで支えているエルヴィン・ジョーンズのドラムがまた素晴らしい。かなりの部分をブラシで叩いているのだが,ブラシってこんなはっきりした音だったっけ?と思うくらい芯のある音でリズムの陰影を描いている。
トミフラは左手の少ないピアニストである。速い曲ならソロの最初のワンコーラスは右手だけではなかろうかというくらい右手のフレーズで畳み掛ける。そう簡単にコピーできる訳ではないが,それでも「ちょっと試しに弾いてみようか」という気になってしまうのは,その右手の魔力でもある。ブルーノートもⅡ-Ⅴもふんだんに出てくる。その意味でもジャズ研お勉強向けに最適なピアニスト,一曲一曲は決して長くないので,じっくり暗記するくらい聴いて,そのフレーズを自分のものにしよう。

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