February 01, 2010

Tommy Flanagan:Overseas

★★★★☆(正統派好きへ,またジャズピアノが上手くなりたい人へ)

 私の憧れたジャズピアニストといえばチック・コリアとミシェル・カミロの2大巨頭,ずっと後になってマッコイ・タイナーと小曽根真といったところだが,どれも「バカテク」だったりして真似ようにも真似ることが能わない。これに対してジャズ研時代プレイの参考になったのはシダー・ウォルトンと秋吉敏子,そしてこのトミフラ。分かりやすい,耳で追える,基本に忠実の3拍子揃っている。コルトレーンの''Giant Steps''では涙目のプレイもあったりするが,ほとんどの場合実に手堅い良い演奏を聞かせる。
 その中でも名盤の誉れ高い本作。トミフラが肩の力の抜けた感じで,のびのび楽しそうに弾いている。1曲目の''Relaxin' at Camarillo''や7曲目の''Verdandi''では弾きたい放題に弾いている。ピアノから引き離しても手だけ動いてそう(笑)。その他,有名な''Ecrypso''では楽しいラテンナンバーを聞かせ,一転して''Chelsea Bridge''はメランコリックなフレーズで攻めてくる。その後ろで支えているエルヴィン・ジョーンズのドラムがまた素晴らしい。かなりの部分をブラシで叩いているのだが,ブラシってこんなはっきりした音だったっけ?と思うくらい芯のある音でリズムの陰影を描いている。
 トミフラは左手の少ないピアニストである。速い曲ならソロの最初のワンコーラスは右手だけではなかろうかというくらい右手のフレーズで畳み掛ける。そう簡単にコピーできる訳ではないが,それでも「ちょっと試しに弾いてみようか」という気になってしまうのは,その右手の魔力でもある。ブルーノートもⅡ-Ⅴもふんだんに出てくる。その意味でもジャズ研お勉強向けに最適なピアニスト,一曲一曲は決して長くないので,じっくり暗記するくらい聴いて,そのフレーズを自分のものにしよう。

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November 29, 2009

井上道義指揮 オーケストラアンサンブル金沢&新日本フィルハーモニー管弦楽団

2009.11.28 石川県立音楽堂
演目 マーラー 交響曲第3番 メゾソプラノ バーナデッド・キューレン

 「あの指揮者,夏の風景のマーラーを,天上風景にしてしまった」

 その編成の大きさゆえ,なかなか簡単にお目にかかることのできない3番。金沢では2002年11月のシャイー・コンセルトヘボウ以来の再演である。今回は小編成オケのOEKに助っ人として新日本フィルが入るというもので,第一楽章はOEKが第一パートを担当し,残りは新日本が担当するという変則的組み合わせとなった。ステージ全体に所狭しと楽員が並び,見るからに大編成である。配置は両翼にヴァイオリン,ホルンは左翼に,パーカッションが右翼となっていた。
 この3番,オケの力量が存分に問われる。特に第1楽章はなかなか決まらないようで,今回もホルンや弦など,必ずしもバランスが取れていたとは言い難い。特に管が存在感を持つと,弦がすっかりかき消されがちになる音楽堂の特徴にも大きく影響される。それでも音楽自体は初めから心にぐっと刻まれるもので,おそらくはこの曲自体の不思議な魅力によるところが大きいのだろう。井上の解釈は派手に鳴らし,テンポも相当に揺らすもの。場合によっては賛否の分かれるものかもしれないが,こと井上にかかると「だってそうしたかったんだも~ん」くらいに伸び伸びと聞こえてしまうところがこれまた不思議なところである。明と暗の対比が明快な第1楽章であるが,暗いところもやや明るく,明るいところはエネルギーに満ちた快活さをもっていた。ここではトロンボーンのソロが秀逸。
 第2楽章以降演奏はいよいよ細部まで明快に,それぞれの音がしっかりと意味を持って届くようになった。第3楽章の最終部,大きな盛り上がりを見せるところでいきなり合唱及びソリストの入場。おもわず注意を摂られてしまったところで,実は見事に決まったエンディングを響かされる。これは勿体無い。最後の余韻だけが美しく残って,細部まで聴けなかった。
 メゾソプラノのバーナデッド・キューレンはかなり子音のはっきりした歌い方やビブラートの強さが,若干ながら楽章の性格よりきつめに出てしまったのが残念。また舞台の向こうのポストホルンも細かいところで残念な演奏となった。
 第5楽章もこの曲の聴きどころ。今回のために特別編成された女声合唱は驚くほど素晴らしい演奏を聞かせた。この曲に求められる透明感,blendnessといったものがアマチュアながら見事に達成されており,歌詞の持つ意図を十分に伝えるものだった。
 さて,それまでと違い第6楽章は緻密な構成と表現にささえられ,弱奏から次第にクライマックスへ昇華するこの曲の最大の聴きどころである(個人的には1楽章だが)。弦は瑞々しくも暖かに,内に秘めたその祈りにも似た情感をつくりあげた。ここでは井上はそれまでと打って変わって,エネルギーの放出と抑制を巧みにコントロールしながら,この巨大な伽藍のような楽章を丁寧に鳴らし,荘厳な響きを最後まで維持し続け,聴き手のカタルシスを存分に導いていたように思われる。この曲はいつでも,どんな形でも私たちを感動に誘う。そんな思いに浸れるコンサートとなった。


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July 03, 2009

The Brecker Brothers : Straphangin'

★★★★☆(ここぞ元気に行きたい人に)

 ブレッカー・ブラザースといえばセルフ・タイトルの一枚目で世間の度肝を抜いたバンドだが、おそらくそれと同じくらいの度肝を抜く、あるいはそれ以上のクオリティを誇る一枚。
 まあお聴きなせえ。タイトル・チューンの 'Straphangin'’も悪くないが、とりあえずa'Bathsheba’で繰り広げられるソロの応酬でまずカラダがノリ出すに違いない。そして'Not Ethiopia’の怒涛のようなフレーズで圧倒されるはず。70年代後半以降21世紀まで、サックスのマイケルが繰り出すこの一連のフレーズで、ジャズをはじめとする世界のテナーは牽引されたといっても過言ではなかろう。あちこちで聴くことができるマーカス・ミラーの「冷静と情熱の間」ベースプレイも要チェックである。
 ダルい夏の朝、これで一発活を入れて仕事に向かうのはいかが?

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January 27, 2009

Cedar Walton : Midnight Waltz

★★★★☆(Jazzの好きな幅広い層に)
 先日触れたシダー・ウォルトンの比較的最近の作品。既に齢70を超えるが,彼のプレイは年代やスタイルを越えて常にクールかつ独特であり,むしろそのぶれない音が一層光をもちだしているように思われる。彼のつくる曲はきれいなコード進行の中にところどころモードや転調などスリリングな展開の混じるもの。これがまた現代にもすんなりと受け入れられる。
 後半にこれでもかと畳みかけられる名曲「Bolivia」「雨月」もさることながら,前半にある「Turquois」も聴きもの。初期の作品「Turquois Twice」のアップテンポから,今回はミディアムのワルツになったが,それでもぐっと引き込まれる。また,サイドメンとしてドラムをたたくいぶし銀の巨匠ジミー・コブも特筆。
 家のソファーで,バーのカウンターで,コーヒーやお酒片手に寛いだ時間を過ごすなら,どこでもピッタリの一枚。ぜひぜひおすすめ。
 

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January 13, 2009

シダー・ウォルトンとボブ・ミンツァー

 一流以上の力量を持ちながら,なぜかちょっとだけ陰に隠れるジャズ・プレイヤーといえば思い出すのがこの二人。私はとても大好きなのであるが,リーダー作は実力に比べて少ない(と思っている)。
 シダーといえば,アートブレイキーの「モザイク」とか,「ウゲツ(Fantasy in D)とか,イースタン・リベリオンの「ボリビア」とか,小粋な名曲の作者である。おまけに分かりやすいプレイでも群を抜く。何というか,悪口を言えば圧倒的な技術はないというか。シンプルなフレーズから始まって途中で盛り上がる。そのうち単純なフレーズの繰り返しで盛り上がりを持続させ,最後はブロックコードでおしまい,みたいな彼らしい組み立てがある。これが大学でジャズをやっている学生にとって見れば,「何となく真似出来る」ものにも映る(秋吉敏子やトミー・フラナガンにもこの気がある)。ひょっとするとシダーの人気は,リスナーと言うよりアマチュアプレイヤーに支えられているのか?といった気になる。幸いまだ健康で存命である。ぜひ大事にしておきたい。
 これまでも何度か紹介しているので,今回は基本のこれを勧めたい。「ターコイズ・トゥワイス」が名曲である。

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April 21, 2008

オーケストラ・アンサンブル・金沢 小曽根真コンサート

 4/20日 石川県立音楽堂 指揮 井上道義

 ここのところ金沢に来れば外さずに聴きに行く小曽根真。今回はオーケストラでラプソディ・イン・ブルーを演るという。そもそもラプソディ・イン・ブルーがたまらなく好きなワタクシ。いそいそと参りました。地方オケとしては出色の音色とアンサンブルを誇るOEK。さて演奏のほどは。

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April 05, 2008

Chick Corea; Five Trio Box & Duet

 近頃チック・コリアが忙しい。2007年から2008年にかけて立て続けにリリースラッシュである。ここ10年ほどのチックは,言っちゃ何だがノリが悪かった。相変わらずのチック節だが,何というか小難しいというか,勢いとドライブ感に欠けて気がしないではなかった。
 それが今回,勢いのあった時代のメンツや,当代勢いのある若手に押されて,昔のチックを取り戻しつつあるように思う。
 Five Trio Boxは5チームのセッション(とスペシャルトラック)でできている。まずはDisc 6のスペシャルトラックから聴いて欲しい。“Spain”は言うにおよばず,“50% Manteca”や“Gloria's Step”など,キレのいいプレイが目白押し。チックが弾くMantecaは,多分これが最初かも。心も体も揺れるプレイに満足すること間違いなし。


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January 28, 2008

Tokyo ensemble lab, breath from the season

☆☆☆★★手に入るうちにゲットしてもらいたい「隠れた一品」である。

 もうずいぶん古くなってしまったが,角松敏生プロデュース,数原晋リーダーという異色のビッグバンド。日本の蒼々たるジャズメンを贅沢に使ったバンドであり,アンサンブル・ラボという名前から伺える通り,アンサンブルにはなかなかのものがある。
 何といってもオススメは,Spainと同様ニカタのテーマといっても差し支えない「Nica's Dream」。どんなバージョンよりパワーのある演奏が楽しめる。そしてその核となっているのが村上「ポンタ」秀一。この曲での彼のスネアとハイハットは効く。
 フュージョンっぽい曲より,Deja BluesやBlue skysといったジャズよりの曲に魅力があるのは,メンツがやはりジャズメンだからか。

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January 16, 2008

Super Trio Corea/Gadd/McBride

☆☆☆★★(チックファンには一聴の価値有り)
 チック・コリアの「スペイン」といえば,泣く子も黙る名曲であるが,90年代に入ってチックが新しいアレンジを採用して以来,長いこと「小難しいスペイン」となっていた。それはそれでお好きな人にはたまらないのだが,何というか昔のアレがねえ...という御仁も少なくはないだろう。
 それを払拭するのがこのアルバム,正統派ジャズにはちょっと物足りないガッドのドラムも,ここではなかなか冴え渡る。どの曲もチックの十八番,こなれた手練れの演奏が楽しめる。いかんせん物足りないのは,やはりチックの「キレ」に乏しく,最近のチックらしいフレーズが押し出されること。そして何といっても「スペイン」が途中でフェード・アウトになってしまうこと。ちなみに「ウィンドウズ」や「シシリー」でも,情熱と抑制の間のきわどいところでのなかなかのプレイが聴ける。

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October 02, 2006

TO CHI KA

★★★★☆(日本を代表する名アルバム)
 日本のフュージョン界に大きな足跡を残す渡辺香津美,リリースから20年以上たっても色褪せない作品がこれ。
 なんといっても曲がいい,メンツがいい。香津美の代表作ユニコーン,コクモアイランド,などがここにそろっている。その中でもオススメは「SAYONARA」,そして「Manhattan Flu Dance」。前者はこれ以上美しく,かつ人々に明るい希望を持たせる「さよなら」があるだろうかというバラード。メロディも,ソロの美しさも格別。後者はノリノリのナンバー,香津美のプレイもさることながら,マイケル・ブレッカーの珍しくテクニカルと言うよりブロウ主体のソロが聴ける。はっきり言って香津美はMOBO時代のナンバーだけで食べていける,あるいは食べていっているのではないかと思わせる。はっきり言って,「買い」です。

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