September 30, 2009

カツ丼学概論 第8講 「カツ丼の政治学 ―議会制民主主義の本質―」

 さて諸君,世間では政権交代がおこり,大きな変化が起こっているようだが,今日はカツ丼における政治学的構造というものについて少し話をしておこう。もちろん,ここでは取り扱っているのは「卵とじカツ丼」のことである。

 カツ丼をカツ丼たらしめているものは,他ならない「トンカツ」の存在である。これがなければカツ丼ではなく,ただの玉子丼と認識されても致し方ない。しかしカツ丼において重要なのは,果たしてカツなのであろうか。第5講の美学的考察でもふれたように,カツ丼はカツを始めとして玉子,つゆ,玉ねぎなどがバランスよく調和していなければならないという「ゲシュタルト的調和」によるところが大きいだろう。考えてみて欲しい,世の中でカツ丼の良し悪しを論じるとき,多くの人々はカツを語るだろうか?もちろんカツも問題となるだろうが,多くはつゆだくか否かのようなつゆの問題,玉子のとじられ方の問題,量が多いかどうかといったボリュームの問題,はては上に載るのが三つ葉か海苔かといった補助材料の問題まで幅広く,むしろカツ自体の問題など決して大きくないではないか。揚がり方は大概似たようなものであり(それがつゆによってさくっとしているか否かは煮方の問題である),厚さはむしろ薄くても良いとされ,ブランド豚の使用にいたってはほとんど語られないほどである。

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April 23, 2007

カツ丼学概論 第7講 金沢におけるカツ丼文化の特徴 —そのオリエント性—

第12048回 日本カツ丼学会総会(金沢にて開催) 基調講演

金沢におけるカツ丼文化の特徴 —そのオリエント性—
  講師 荷方邦夫先生(百万石栄養大学文化学科准教授 Ph.D〔カツ丼学〕)

 おいでまっし(金沢弁で「ようこそおいでださいました」),ようこそおいでくださいましたことを歓迎いたします。百万石栄養大学文化学科の荷方でございます。本日はこの地金沢で当学会が開催されますにあたり,大会委員長であります私が基調講演をする運びとなりました。カツ丼ゆえ幾分脂っこい話もございますが(笑),日本におけるカツ丼文化の1つの視点として,この地金沢のカツ丼から見えてきますものをお話しさせていただきます。
 日本における食文化の地理的・歴史的考察はこれまでも沢山あります,単に関東の濃口,関西の薄口という単純なものから,フォッサマグナを分水嶺とした鮭・ブリ文化の歴史的展開など,その数は枚挙にいとまがありません。その中で当地金沢は,複雑な文化と歴史に裏付けられた多様なカツ丼文化を花開かせております。あとで申し上げますが,「食のオリエント文化」と形容すべき様相がこの地にはあるわけです。
 

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October 05, 2006

カツ丼学概論 第6講 茨城におけるカツ丼

「カツ丼学概論(講師:荷方邦夫・1単位・コア的科目)」

第6講「茨城におけるカツ丼 定性的研究の実際(1285773)」

 今回は筆者が20代のほとんどをすごした茨城県におけるカツ丼のフィールドワークについて紹介する

1 トンカツ王国茨城の「あいまいなカツ丼」
 もうだいぶ前の情報ではあるが、茨城県は10万人辺りのトンカツ屋の数が日本で一番多い県だそうである(今は定かではない)。確かに町のいたるところにトンカツ屋があり、その中身も多士済々である。茨城県は関東随一、そして日本でも有数の養豚県であり、「ローズポーク」という統一ブランド名で売り込みが盛んである。その意味ではトンカツの材料が潤沢にあるのだから、数が増えるのも無理はない話である。ちなみに養豚県といえば鹿児島や宮崎も有名だが、筆者の出身地熊本も含めて、トンカツ屋があまり多いわけではない。どうもこのトンカツ屋なるものは関東、あるいは東京に多いようであって、いわば関東の「名物」といってよい(ちなみにトンカツは大正期に東京の食堂で初めて供されたという説が有力である。)。

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October 03, 2006

カツ丼学概論 第5講「カツ丼の美学的一考察」

第5講「カツ丼の美学的一考察」

 今回は特別に、カツ丼が持つその幸福・哲学、そしてあり方について論じることとする

1 カツ丼は何故人々を幸福にするか

 われわれ日本人にとって、カツ丼はささやかな「幸福」をもたらす食品である。日常が「ケ」と呼ばれる世界で満たされる日本の精神構造において、カツ丼は日常にひとつの特別の時間を提供する食べ物というべきであろう。しかしそれは現代思想で取りざたされるところの「ハレ」の、「ディオニソス的」祝祭のような派手なものではない。あくまでカツ丼は、日常における幸福である。

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October 02, 2006

カツ丼学概論 第4講「カツ丼における栄養学的考察」

第4講「カツ丼における栄養学的考察」

 「カツ丼でも食って力つけるか!」とは日常においてしばしば耳にする光景である。このことから判るように、カツ丼はスタミナ源として広く認知されている。この認知度はレバニラ炒めが持つそれとほぼ同等であると考えてよいだろう。しかし、レバニラ炒めとの大きな差異として、レバニラがしばしば「スタミナ源だから食べる」という高い目標性を持つことに対し、カツ丼はあくまで「カツ丼を食べたい」という動機が強いことである。
  レバニラは、「最近ちょっと疲れ気味だなあ」と個人が感じた際に、なぜか目の前に認識されやすい。それはレバニラが、「僕って栄養価が高いんです。ほら、レバーもニラもビタミンAがこんなにあるんですよ。にんにくはアリシンがビタミンB1の活性を助けるし。え、食べないの?そんなことで大丈夫なの。ほら、食べなさいよ!」と脅迫する向きさえある。そうでなければあれほど食べにくい(苦手な人が多い)レバーが市民権を得ることもなかっただろうとすら思われるのである。私はレバニラは「脅迫性の強い食品」と考えている。
これに対してカツ丼は、そのような脅迫性が小さい。そもそも肉を食うという意味以上に本当にどのような栄養価があるかもわかっていない人が多いのではないだろうか? 

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October 01, 2006

カツ丼学概論 第3講 「カツ丼の工学的検討」

第3講「カツ丼の工学的検討」

ー カツ丼の調理法 ー
 カツ丼(本講義においては「卵とじ形式」のもの)は、非常に大胆かつ繊細な調理を以て供される。本日は、最も一般的な手順を追ってカツ丼の調理法について議論を行う。

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September 30, 2006

カツ丼学概論 第2講「カツ丼の基本的概念」

あくまで言っておきますが「ペダンティックなシャレ」ですから。

第2講「カツ丼の基本的概念」 ー カツ丼のバリエーション ー

 カツ丼(本講義においては「卵とじ形式」のもの)は、その構成要素及び体裁によってある程度多様なバリエーションを持つ。これは他の食品においても同様であるが、しかし著名なメニューであるカツ丼ではあるが、その多様性はラーメンやチャーハン、あるいはカレーライスの持つ多様性との比較においては、圧倒的に小さな領域に限定されている。これまでの研究(荷方,1996)において、カツ丼は以下のように定義される。

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September 29, 2006

カツ丼学概論 第1講 「カツ丼の歴史とその展開」

新装版への序文
 「カツ丼学概論」は,私のホームページ「ジャズと認知とエッセイと」のコーナーとして古くから存在するコンテンツである。はじめに申し添えておくが,本コンテンツは「 日本における著名な丼物であるカツ丼について、その現在的意義について、栄養学的・美学的・社会学的見地から講義する。カツ丼の基礎的知識を修得し、社会における基本的なカツ丼に対する見方を養うのが本講義の目的である。」というテーマをおいて,カツ丼を研究しようという「ペダンティックなシャレ」であり,実際の学術的な意味は全くもってない。それでも時折真剣な発言を返す御仁もいるが,その点ははっきりと理解頂きたい。

 このコンテンツは私にとって思い出深いコンテンツであり,まだ個人ウェブがそれなりに未発達だった10年前に,かすかに取り上げられたりした。そのなかでも2001年夏,日本テレビ「ニュースプラス1」からの取材(制作は有限会社レック)を受け,「究極のカツ丼を作る」という特集の為に「カツ丼博士」として出演し(まだこの頃,私は本物の学位をもっていなかった...),わざわざ大阪北新地のK田川某の店まで訪れてカツ丼を食したことは,私の中での「シャレが生んだ最大のイベント」である。残念なことにこの企画は諸事情でお蔵入りし,日の目を見ることはなく,当時貰った「日テレ,なんだろう君グッズ」だけが当時の面影を残している。そんなこんなで,まあとにかくよろしく。

 今回,ホームページを整理するにあたり,本コンテンツをブログ化し,更に数回の新規講義を行おうと考えている。履修登録が必要なものは,学務システムに直接入力の上受講すること,なお聴講・薩摩守は大いに歓迎である。

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